休眠会社の定義とメリットデメリット
休眠会社とは、「法人として会社組織は存在しているにも関わらず、事業活動が行われていない会社」です。休眠会社は、経営者や社員が怪我や病気のために事業活動が一時的にできなくなったため、あるいは事業活動が停止し再開の見込みがないものの、解散登記が行われていないために生じます。日本中には休眠会社は9万社以上もあるとされ、その多くは再開の目処がありません。
休眠会社にすることにはメリットもあります。事業活動ができない場合だとしても、休眠会社にしておくことで再度事業を始める時に面倒な開業手続きをする必要がありません。さらに、設立年は変わらず設立からの年数が加算されていくため、融資などの審査では完全な新規開業よりも有利です。また、休眠会社にするとしても、期中であればその年度にかかった経費は経費計上して決算申告をすることができます。
しかし、休眠会社の状態で12年が経過すると強制的に解散登記が行われますし、休眠中だとしても法人税の均等割分は毎年納税義務があります。加えて、青色申告は2年間申告が行われていない場合、承認が取り消され、損失の繰越など税控除におけるメリットも失われるなどデメリットもありますので注意が必要です。
また、休眠中の会社は法人名義を買い取りたいと申し出る人が表れる場合があります。休眠会社の持つメリットを享受したいという目的ではありますが、社会的に良くない提案や事業が行われることもありますので休眠会社の買取提案は良い条件が提示されたとしても避けた方が無難です。事業の再開目処がない場合は、基本的に休眠会社にはせず、法人を解散することをおすすめします。
休眠会社の決算と税申告
たとえ休眠中だとしても、事業法人は原則として決算を行い、決算に伴う法人税の申告を行う義務があります。ただし、法人税は利益に対して課税されるものです。事業活動が無いために利益も発生しませんので、決算は赤字で所得税は無課税になります。役所でも事務的な手間が増えるだけですので、休眠中の企業に対しては申告がないと指摘をすることはありません。
けれども、法人住民税の均等割額については納税の義務がありますので注意が必要です。法人住民税があるために、休眠会社だからと言って全くの非課税にはなりません。この法人住民税は都道府県あるいは市町村の税事務所や市民税課などで扱っているもので、そのうちの均等割分については、会社規模などに応じて毎年決められた金額を納めることが必要です。この法人住民税の均等割分は、会社の決算状況に関係なく納税しなければいけませんが、休眠中であるという事情を知らせることで減額や免除をしてもらえる場合もあります。
また、期中に休眠会社にすることにした場合は、決算時までに発生した経費は例年通り経費計上することが可能です。ですが、この場合は法人住民税の均等割分の納税も通常通り行うことが必要で、減額や免除を受けることはできません。
さらに、休眠会社の税申告にあたっては、法律上は通常の法人税申告と同じ手続きが必要です。しかし、休眠中の場合は地域や役所によって、会社の住所や所在地などの基本的な情報や会社印が押されていれば、「休眠中」と余白に書くだけで細かい計算や数字の記入を免除されることもあります。税申告書類を作成する目的は、納税が正しく行われているかを確認するためであり、結果が明らかであれば問題がないからです。対応は自治体によって違いますので、会社が休眠中の場合は、大雑把なもので構いませんので財務諸表を作成して、窓口で税申告に関する具体的な相談をするのが良いでしょう。
休眠会社の経費計上は認められない
休眠会社は売上がないため、利益を出すことはできず、物件の賃料や水道光熱費などの経費については全額赤字となってしまいます。ただ、たとえ赤字の決算だとしても、通常の会社であれば決算時に経費計上して税申告することができますが、この場合は多少でも売上が発生しているか、あるいは営業活動の実態を証明できることが必要です。
商品やサービスを案内する資料や、見積書や請求書など営業活動が行われたことを客観的に示すものが求められます。しかし、休眠会社は事業活動が行われていない会社ですので、営業活動はおろか、商品やサービスもありません。そのため、赤字決算の会社と一緒に考えることはできません。
会計における経費の考え方は「売上をあげるために必要な費用」であるため、売上をあげるための営業活動が行われていないなら経費は発生しないことになります。そのため、休眠会社であることが税申告の内容から明らかな場合は、原則的に経費計上は認められません。経費計上を認めてもらうためには、休眠会社ではないことを示す客観的な根拠が必要です。